今、改めて「理念重視の経営」を考える

「ダスキンには『客の心を心とせよ』というミッションがあります。本部とお店とお客様をつなぐ双方向のコミュニケーションが実践できれば、まさにこのミッションに即した店舗運営が可能になるのです」

これは、自社の経営理念を重んじる(株)ダスキンにおいて経営改革を推進する幹部社員によるメッセージだ。同社創業者の鈴木清一氏は自らの経営理念を「道と経済の合一」と表現し、良い行動(道)こそ利益の源泉(経済)であることを説いたという。

最近、改めて自社のミッションや社員バリューを見直す企業が増える中で、創業時の経営理念の実現に邁進し続けている好事例といえるだろう。

創業120年を迎える花王(株)の経営を根底で支え続けてきたのも、創業者である初代長瀬富郎氏が提唱した『天佑は常に道を正して待つべし』という経営理念である。その思想は2006年に再構成された「花王ウェイ」によって、現在まで継承されている。

花王ウェイは『使命』、『ビジョン』、『基本となる価値観』、『行動原則』という4つの柱で構成され、それぞれの文言に花王が継承してきた経営思想が表明されている。その経営思想が最も端的に表現されているのは、『基本となる価値観』に記されている〈正道を歩む〉という決意だ。

昨今、いわゆる一流企業と標榜された企業において次々と残念な不祥事が多発したことで、とかく不祥事を防止するためのコンプライアンス(法令遵守)規定制定が取りざたされている。しかし花王が掲げる〈正道〉とは、そうした拙速でご都合主義的な自社防衛策では決してない。

企業価値向上を目指す企業において、内部監査の仕組み構築による経営ガバナンスの強化だけでは、およそ社員の求心力を維持し、士気を高めることには貢献できず、かえって「性悪説」にたった管理強化のイメージがつきまとう。社員の活性化を促し、職業人としてのやる気を発揮させるためには指針となるべき経営理念の再確認が不可欠だ。

どこの会社にも“社是社訓”に代表される含蓄に富む創立の精神が記されていることだろう。規律とバランスを求められる21世紀の経営において、ともすると現代人には難解かもしれないそれらの言葉に込められた真意を鑑み、自分たちの行動を省みることが強く求められているのかもしれない。

果たして創業者は、今の自社業績を、そして後継者である社員たちをどのような思いで見つめているのだろうか?